私は、小学生の頃に「王家の紋章」という漫画を読み、そこからミイラというものに興味を持ちました。
この「王家の紋章」という漫画は、古代エジプトを主な舞台にしています。
主人公のキャロルは、現代から時空を超えて古代エジプトにタイムスリップしてきます。キャロルを中心に、古代エジプトで出会ったさまざまな人物のドラマが描かれています。
初めてこの漫画を読んだ時にとても印象的だったのは、「ミイラを作っていく過程」でした。
そこで、ミイラや古代エジプトについて本を読んだりすることも増えました。
※この動画は実際に自分で作成したミイラの動画です。
そして、その中で私は古代エジプトと日本の伝統文化につながるものを感じました。
もちろん、一見すると接点がないように思われるかもしれません。しかし、視点を変えると共通点があると思っています。
例えば、古代エジプトの神話では自然をテーマにしています。そして様々な動物に対しても神として扱っている、つまり、多くの神が周りにいるという認識の状態で暮らしたという解釈ができるわけです。
そして、ミイラは「自分の幸せがいつまでも続くように」という人間の根源的欲求をもとに作られたともいわれているようです。
この点は、茶道・禅にも究極的にはそのようにいえるのではないでしょうか。
苦しみから逃れたい、つまり幸せにありたいという思いのもと、教えがあるのです。
このように、エジプト文化全般に亘って、年長者、貧しい人々、社会的弱者など、他者への思いやりと尊厳が重視されていたことが分かります。
目次
精神性を表現する
エジプトのピラミッドには、人間の精神性を表す様々なデザインや装飾が施されています。
まず王家の谷のピラミッドには、死者が来世へ旅立つ際の魂の巡礼の道筋が彫刻されています。これは、死後の精神的な旅路を表現したものです。
また内部の通路には、死者を守護する様々な神々の姿が描かれています。死者の魂が来世へ安全に旅立つことを願う精神性が反映されています。
さらに、ピラミッドの天井に描かれた星座は、死者が天上界へと旅立つ道しるべとなるものでした。星への憧憬は、精神世界への希求を現しています。
副葬品の中には、魔法のお経が書かれたパピルスが含まれることもあります。死者が来世で読誦することで、魂が昇天できると考えられていました。
このように、ピラミッドには死者の魂の旅路、神々の加護、星座への憧憬など、人間の精神性を表現する様々な要素が取り入れられているのです。建築そのものが精神性の表現となっているともいえます。
瞑想を大切にする
エジプト古代神話には、瞑想を重視するエピソードがあります。
例えば、太陽神レーは毎朝舟に乗って世界を航海し、夜になると世界の裏側に到達して瞑想にふけります。この瞑想の間に次の日の出発に備えるとされています。
また、エジプトの主神オシリスの息子ホルスは、父親の復讐のためにセトと戦うことになりますが、その前に瞑想をしてカの力を高める必要があると言われています。瞑想によって神々の知恵や力を獲得できると考えられていたようです。
さらに、ネフティスと呼ばれる保護女神は、人々の魂を守るために夜ごとに瞑想をし、悪しき呪いから個人を守ったとされています。瞑想は魂の浄化や保護と結びついていたのです。
自然に対する敬愛
エジプト神話には自然環境を大切にする内容も描かれています。
まず有名なのが、太陽神ラーの航海です。ラーは夜ごとにナイル川を舟で航行し、午前中は空を通って太陽を運びます。この航海はナイル川の豊穣と関連づけられ、ナイル川そのものが畏敬の対象でした。
また、ナイル川の氾濫は神オシリスの死と復活に関連づけられていました。オシリスが弟のセトに殺されると、その血が川に流れ出し、氾濫をもたらしたとされます。氾濫は豊穣の象徴でした。
さらに、牛の女神ハトホルは天の乳房と呼ばれ、乾燥した大地を潤す牛乳に例えられていました。彼女は雨を降らせる雨の神でもあり、農作物の成長を助ける存在でした。
このように、エジプト神話では特にナイル川をはじめとする自然環境が、神々の営みと関連づけられ、尊重されていたのです。
精巧な工芸技術
また、ピラミッドは建設の過程で、技術者達の粘り強い努力があったことがうかがえます。
ピラミッド建設に携わった技術者達の高度な技能は、クヌム神の加護によるものとされていたようです。
石工達の粘り強い努力も、神々への信仰心と深く結びついていました。
茶道でもお茶碗などにおいても職人の精神性が求められる点は共通しています。
人への尊敬
エジプト文化では、人への尊重が非常に重視されている、以下のようなエピソードがあります。
「マートの教訓」と呼ばれる古代エジプトの格言集には、「年長者を尊重せよ」「貧しい人々に思いやりを示せ」など、他者への敬意を説く言葉が数多く含まれています。
エジプトの葬送儀礼では、死者の魂が裁かれる場面で、生前の行いが問われます。他者に対する思いやりの心が非常に重視されていました。
法令文書では、障害者や寡婦、孤児などの弱い立場の人々を保護することが明記されています。社会的弱者に対する配慮が法的にも定められていました。
階級社会ではありましたが、奴隷も人間として一定の権利が認められていました。奴隷制度下でも人道的配慮がなされていたのです。
エジプト人は食事の際、他者と分け合う習慣がありました。人と人のつながりを大切にする文化がありました。
このように、エジプト文化全般に亘って、年長者、貧しい人々、社会的弱者など、他者への思いやりと尊厳が重視されていたことが分かります。
永く続く文化の共通点を知る
今回は、視点を変えてエジプト文化と茶道の文化との共通点をピックアップしました。
いかがでしょうか。
やはり多くの人が魅了される文化というのは、同じような点があるのかもしれません。
だからこそ、他の国の文化についても知るということはとても面白いですね。
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