茶道というと、「お茶を飲む」ものというイメージが強いのではないでしょうか。
もちろん、茶道は美味しくお茶を飲むために作法やお茶会の流れが定まっています。
しかし、茶道の教えもお茶会も、一番大切なことは「自分も相手も大切にする」ことであり、その思いを表現するために作法があります。
「大切にしたい」という行動を取れば、相手に思いが伝わります。
それによって相手からも「あなたを大切にしたい」という気持ちになり、その思いを表現する行動をされます。
そこで、日常生活でも活用できる人間関係が上手くいくコツをご紹介します。
目次
1:相手からしてもらう、ひとつひとつの行動に感謝と尊敬を行動で表す
茶道では、お茶会に参加したり、練習をすると相手からしていただく行動に対してひとつ、ひとつにお辞儀をします。
そのお辞儀には意味があり、シーンごとに種類もあります。
すべて覚えることは大変ですが、お辞儀の本質とは「相手への感謝と尊敬」です。
例えば、お菓子を出していただいた時、お茶を飲む時、複数の方と参加して自分から先にお菓子やお茶をいただく時。
そんな時に、その都度「相手への感謝と尊敬」を表現するためにお辞儀をするのです。
この思い、行動は日常生活でも十分に活かすことができます。
例えば、私はコンビニに行って、買い物をした際に、必ず店員さんに「ありがとうございます」と言います。
人によっては、自分が商品を購入をしているのだから、感謝や尊敬なんて要らない、不自然だと思う人もいるでしょう。
時には、店員さんに「ありがとうございます」と言うと驚かれることもあるくらいです。
それほど、多くの人は店員さんに感謝の言葉を伝えていないのでしょう。
しかし、よく考えてみてください。彼らがいて働いてくれているから、そのお店で商品を購入できるのです。
何ひとつとして、相手に感謝と尊敬の念を抱かないことはないでしょう。
このようなことが自然に出来れば、癖づけになって誰にでも「ありがとう」と伝えやすくなります。
それが、人間関係でも良好な関係を築きやすくなるのです。何事も、どんな人にでも、「当たり前」はありません。
2:人を招き入れるには、心地よく過ごせる空間や環境を整える
茶道の茶室は、必要最低限のものだけを飾り、整理整頓と掃除を徹底的にします。
その理由の1つには、相手に心地よく過ごしてもらうためです。
一緒に過ごす空間や環境を綺麗にすることで相手に「大切なあなたに心地よく過ごして欲しい」という意思表示になります。
それが相手に伝わり、相手もその空間や環境を安易に乱すこともなく、「お互いが心地よく過ごせるように」意識するのです。
お互いを大切にしあう意識ができれば、それは行動に変わり、言動も変化していきます。
3:TPOに合わせ、和を乱さない
茶道では、お茶会のテーマや時期に合わせて服装などを変化させる必要があります。
お茶会では何よりも「みんなで心地よく、お茶を美味しくいただく」ために、それを邪魔するようなものは省きます。
例えば、お茶の香りを引き立てるため、強すぎる香水は控えます。
茶道の道具を傷つけないように、手元にアクセサリーや派手すぎるネイルも控えます。
これも、自分の主張ではなく、亭主・半東といった主催する側だけでなく、一緒に参加しているお客様との調和を考え、行動するのです。
また、参加する際のファッションも派手すぎるとお茶会の中で一人目立ってしまいます。
これも、お互いに調和を考えて、ファッションも選びます。
例えば、仕事を一生懸命する場の職場にプライベートで遊びに行くような格好はしませんよね。
また、プライベートでも、アウトドアとインドアの遊びでは格好は変わってきます。
例えば、外でBBQをするのに、まるで動きにくいファッションで行くと、その行動に疑問を抱く人もいます。
こんな風に、一緒に過ごす人や空間のことも考えてファッションも変えることが相手への思いやりに繋がるのです。
4:相手よりも先に自分が利益を得る際には、一言添える
茶道のお茶会では、基本的にお菓子やお茶が順番に運ばれてきます。
例えば、自分が相手よりも先にお菓子やお茶をいただく際は、隣の人たちに「お先に」とお辞儀をして、お先にいただきますね、という気持ちを表現します。
これは、順番によって「私が先に優先されるのは当たり前だ」というような傲慢さの印象を相手に与えないためです。
なぜなら、茶道では「どんな身分の人も平等である」という教えが基礎になります。
だからこそ、このような配慮が必要になります。これは、お茶会だけでなく他のことにも活用できます。
例えば、エレベーターに乗っている際に、ある階で止まったことがあるとします。
その階では、何人かそのエレベーターに乗りたかったけれど、人数に定員があり、その際には乗れなかった場合です。
ぜひ、その方に一言でも「お先に失礼します」といってエレベーターを閉めれば、その人に「気遣ってもらえたな」と思うでしょう。
もちろん、自分に非がなくても、相手に目に見える形で自分に恩恵がある場合には、その相手のことを思って一言でも気遣いの言葉があるのとでは印象が違います。
5:場面ごとに挨拶と感謝の表現を欠かさないこと
茶道では、挨拶や言葉を大切にします。例えば、茶道の作法の1つに、意味ややり方の違うお辞儀をすることがあります。
裏千家では、このお辞儀が3種類あり、真(しん)・行(ぎょう)・草(そう)となっています。
真(しん)とは、お茶をいただく際など、最も丁寧に深くお辞儀をします。
行(ぎょう)とは、お菓子をいただく際にとなりのお客様へ「お先に」という意味を表現をするお辞儀です。
草(そう)とは、会釈の意味となる最も軽く頭を下げるお辞儀です。
このように、人への挨拶や感謝を表現するお辞儀を場面ごとに使い分けるのです。
例えば、会った時は必ず挨拶をする、先に自分が何かする際は「お先に」と思いやることなどです。日常生活で活用ができます。
日常生活で活用できる!よりよい人間関係ができるコツ
いかがでしょうか。茶道の作法や考え方には、「人も相手も大切にする」というものが根底にあります。
通常の茶道の教室では、作法が自然にできるように何回でも何年でも繰り返し、練習をしていきます。
つまり、型から入って、だんだんと自分の中身もそのようになっていく、というような考え方です。
例えば、人は相手に丁寧に接するような意識をしていると、相手に「この人は自分を大切にしてくれる」という印象を与えることができます。
相手にその思いが伝われば相手も嫌な気分ではなく、良い気分になるものです。
それが、相手も「この人を大切にしよう」という気持ちになり、相手からも丁寧に接してもらえるものです。
つまり、ある程度は行動と思考や相手に与える印象は操作できるのです。
ぜひ、よりよい人間関係を築きたいという場合に、意識して取り入れてみてくださいね。